10−1、6秒間

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 それから滞りなく、サラの誕生日会は終わり、あっという間に夜になる。  サラが生まれた時刻は23時48分07秒。  今の時刻は23時を過ぎた頃。サラはルカを自分の部屋まで連れて行っていた。  今日の二度目は『今日は、私のそばにいて』。  そのためルカはサラについていくことしかできなかった。この毎年のことである。誕生日の、どうしてもやってほしいことの1つは、必ずコレである。  サラはルカを、ベッドに座らせている。  その後ろにサラがいる。 「サラお嬢様、それ以上近付かないで頂けますか。レイ様に解雇されます」 「ルカは私のどうしてもやってほしいことを遂行しているだけだわ」  サラはルカの背中に身を預けた。手をルカの腹に回す。 「ねえルカ」 「はい」 「昔みたいに遊んで」 「それはできません」 「私、本当に貴方のこと好きなのよ」 「それは光栄です」 「いつになったらこたえてくれる?」 「サラお嬢様のお相手はそのうち現れますよ」 「もう現れてる」 「レイ様がお許しになった相手ですか?」 「母様はお許しよ」 「マアサ様もレイ様も、お嬢様のことを考えての判断でございます」 「適当に話を返さないで」  サラの腕の力が強くなる。ルカは特に反応を示さない。  このまま眠ってくれれば良い、ルカはそう思って時計を見る。  それから暫くして47分くらいになった頃、サラが起き上がった。寝ぼけていないかと期待をしたが、しっかり意識は保っているようだ。 「あと、いっ、ぷん」 「申し訳ありませんが、離れていただけますか」  サラが離れる素振りは見せない。 「10(ひく)1、6秒間」  温かな息が、ルカの首筋にかかる。サラの口は、ルカのそばに。 「お嬢様」  それから秒針の音が、やけにうるさく聞こえてくる空間になった。
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