新月前夜〜Love Letters〜

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あなたは覚えているかしら? 14歳の時、私にくれた、あの三通のラブレター。 6歳の時にこの島に引っ越して来てから、あなたはずっと一番近くにいてくれた。 同級生で幼馴染。そして私の初恋の人。 13歳の時に「好きだ」って、告白してくれて付き合うことになった。 嬉しかった。 14歳の私の誕生日、十五夜の夜に初めてあなたとキスをした。 すごくドキドキした。ちょっと大人になった気がした。嬉しかった。 でもあの日は村の祭りだったから、少し羽を伸ばし過ぎて帰りが遅くなった。 そして私とあなたは母に怒られて、暫く会えなかった。 その時に届いたあのラブレター。 近所に住んでいるのに、学校で毎日会うのに、わざわざ郵送してくれたラブレター。届いた日の事まで私は覚えてる。凄く驚いて・・・凄く嬉しかった。 高校三年の時、進路で悩んだ時もあなたは側にいてくれて背中を押してくれた。 島で待ってるからお前は自分の夢を追えって。 18歳の時に島を出て、一人大学進学の為に大阪に出た時、御守りがわりに持っていった。 遠距離恋愛はなかなか難しくて続かなくって、結局当時は別れてしまったけれど・・・。 初めての一人暮らし、初めてのアルバイト。 心が寂しくなった時、何度も見返してた。何度も何度も。 この手紙の中に書いてあるあなたの気持ちは嘘じゃないと信じられたから、ずっと持ってた。 あれから17年経って島に帰って来たけれど、今もまだ持ってる。 小さな宝箱の中に入っている。 この前あなたは私に2度目の告白をしてくれた。 「よりを戻してもう一度つきあおう」って。 34歳の私は、青春時代のように”好きだから”という理由だけでは素直に答えが出せないでいる。 今の私は昔より少しだけ強欲になっていて・・・。 つきあうだけでは満足できない。 久しぶりにあのラブレターを開いてみる。 1通目のラブレター 14歳のあなたの字で、私ともっとキスがしたいと書いてある。 思春期のモヤモヤと理性の葛藤。でも私を大事にしたいと・・。 2通目のラブレター 私の母に牽制されるのが辛い事。 しばらくは学校でしか会えない事。 学校だけでは話し足りない事が書いてある。 3通目のラブレター 将来は二人どんな夢を持っていても、それぞれ頑張って夢を実現させて、一緒になろうと書いてある。実現させたらその時は、プロポーズすると。 そして一緒に幸せになろうと・・・。 薄ピンクの綺麗な便箋に綴られた、14歳のあなたの素直な気持ち。 これがあなたの私への変わらぬ想いだと信じたい。 明日、新月の夜に私はあなたに告白の返事をする。 そう約束したから。 答えはもうこのラブレターに書いてある。 私はただ、あなたの思いを信じるだけ。 あなたはプロポーズをまだしてこない・・・ ならば、明日、私からプロポーズしてみるつもり。 でも少しだけ勇気がいるね・・・。 このラブレターに同封されている、一つだけお願いを叶えてくれるチケット。 14歳のあなたが作った可愛いチケット。 これを明日、使ってみよう・・・ 私のお願いを聞いてくれますか? きっとあなたは覚えていてくれる・・・。 今はそう信じてみよう。 終
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