11人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
電話対応
最初は分からないことだらけでも、毎日同じことを繰り返していれば、さすがに慣れてくる。
毎日店舗から上がってくる売上伝票のチェックや、社長や店舗担当者が注文した商品の受け取りと確認、店舗から上がってきた不良品の返品と、やらなければならないことはたくさんあって、バタバタとこなしているうちに一日があっという間に過ぎていく。
そんなある日のこと、いつものように事務所の電話が鳴った。
山口先輩は納品に訪れた業者さんから商品の受け取り作業をしているし、奥野さんは黙々とPCのモニターを見つめながら何かを打ち込んでいた。
ワンコールが鳴り終わる前に電話に出るのは早すぎる。かけてきた相手の心の準備ができていない場合があるので避けた方がいい。
電話に出るのなら、二回目か三回目のコールで出るべきで、四回目を過ぎると少し遅すぎて、かけてきた相手がせっかちな人の場合は不快感を与えてしまっていることになる。
「はい。奥野商事です」
『あ、社長さんはいますか?』
かけてきた相手は社長のお客様の鈴木さんだった。うちの社長と正反対の物腰の低いフレンドリーな性格の男性で、咲も何度か話しかけられたことがあったので、その声を覚えていた。
話しながら壁にかかっている社長のスケジュール表を見た。
社長は明日まで地方出張となっている。
「申し訳ありません。社長は明日まで出張で、明後日の午後くらいの出社になります」
『そうなの? やっばいなー』
「どうかされたのですか?」
『明日までにPCモニターを5台ほしいんだよ。イベントで同じものが必要でさ』
「イベントですか」
ためしに必要だというモニターの型番を聞いてみたところ、その型番の商品が先週の金曜日に6台ほど入ってきていたことを思い出した。
「弊社の店舗に連絡されてみてはいかがですか?」
『君、調べてくれない?』
「私がですか」
『そうそう』
「分かりました。では調べて折り返しますね」
『うん、よろしくね』
電話は切れた。
最初のコメントを投稿しよう!