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就職活動
都内でも最多の電子部品を扱う店が集まる街、秋葉原。
最近ではアニメやゲームの専門店が増えていたり、メイド喫茶を始めとするエンターテイメント系の喫茶店が所々にできて、すっかり街全体の雰囲気が変わりつつあるが、それでもPCショップや電子部品専門店は衰退しながらもまだ秋葉原のあちらこちらで、その存在を保っていた。
立花咲の就職した会社は、そんな秋葉原内に三店舗を構えるPCショップだった。
何でもいいからやってみなさい。住倉先輩の言葉を受けて一大決心した咲だったが、かといって何かの目標を定めたわけではなかった。
大学時代からお世話になっていたレストランの店長には「いっそのこと、ウチに就職しちゃう?」なんて言われたりもしたけれど、フランチャイズチェーンの一店舗にしか過ぎないそのお店では、どんなに頑張っても待遇の改善は見込めないし、末端の立場であった咲もさんざん本部の無理難題に振り回されていたので、とてもバイト以上の立場になりたいとは思えなかった。
仕事をしていく上で重要なのは、人間関係と職場の雰囲気だと思う。
仕事の内容によってはスキルが重要だったりする場合もあるのだろうけれど、それは専門職の場合だ。それに、たとえ専門的なスキルを持っていたとしても、人間関係や職場の雰囲気が良くなかったら、長続きできずに辞めてしまったりもする。
そう考えてみると、つくづく私は従業員タイプなんだなと思ったりもした。リスクを取って独立し事業を興すなんていう決断は、たとえ宝くじで一等が当たったとしても、私にはとても下せそうになかった。
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