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バスから電車に乗り換えて、街に出た。
待ち合わせには、まだ時間があったので、本屋にでも寄ろうかと歩き出した。
「えーと。あの、ゴーストレイトあーんど…」
もっさりした男が、外国人に道を尋ねられている。
なんか、どっかで見たことある奴…
智哉は、近くを通ったついでに助け船を出した。
「May I help you?」
聞くと、駅までの道を尋ねていたようで、智哉は説明してやり、外国人は、センキュー、と歩いて行った。
「あ、すいません。ありがとうございます。中澤くん」
ぺこりと頭を下げられた。
「え?俺のこと知ってんの?」
智哉は、驚いて彼の顔を見た。
もっさりと伸びた髪に黒縁の眼鏡。襟がよれっとしたTシャツに皺の寄ったシャツを羽織っている。
「んーー、ごめん!どっかで逢ったような気はするんだけど、思いだせないわ」
智哉が正直に言うと、そりゃそうですよね、俺なんか、と彼は頭を掻いた。
「同じ大学だっけ?」
「はい、学部も同じ、経済学部です」
「あ。そうなんだ」
「中澤くんは、最初から目立ってたから」
照れくさそうにチラッと智哉の顔を見る。
なんか変な奴。けれど嫌な印象は受けなかった。
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