イケメン君の苦悩

3/57
前へ
/62ページ
次へ
バスから電車に乗り換えて、街に出た。 待ち合わせには、まだ時間があったので、本屋にでも寄ろうかと歩き出した。 「えーと。あの、ゴーストレイトあーんど…」 もっさりした男が、外国人に道を尋ねられている。 なんか、どっかで見たことある奴… 智哉は、近くを通ったついでに助け船を出した。 「May I help you?」 聞くと、駅までの道を尋ねていたようで、智哉は説明してやり、外国人は、センキュー、と歩いて行った。 「あ、すいません。ありがとうございます。中澤くん」 ぺこりと頭を下げられた。 「え?俺のこと知ってんの?」   智哉は、驚いて彼の顔を見た。 もっさりと伸びた髪に黒縁の眼鏡。襟がよれっとしたTシャツに皺の寄ったシャツを羽織っている。 「んーー、ごめん!どっかで逢ったような気はするんだけど、思いだせないわ」 智哉が正直に言うと、そりゃそうですよね、俺なんか、と彼は頭を掻いた。 「同じ大学だっけ?」 「はい、学部も同じ、経済学部です」 「あ。そうなんだ」 「中澤くんは、最初から目立ってたから」 照れくさそうにチラッと智哉の顔を見る。 なんか変な奴。けれど嫌な印象は受けなかった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加