あの夏を背負う

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「それが、この橋」 女は鞄から写真を取り出すと、震える男の手に握らせた。それを見て、かすかな笑みを浮かべる。やがて、小雨が降り始めた。写真に一つ二つとシミが浮かぶ。 「ねえ、帰ろっか。ぬれちゃうよ」 「ああ……」 うなだれる男の手を女が引く。じっとりと蒸し暑い空気が肌にまとわりつく。 「もう、忘れないでね」 女は振り返ると、にっこりと微笑んだ。
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