オレは奴隷

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オレは奴隷

 朝、目が覚めると体が動かない。  ピピピ、ピピピ  目覚ましの音が、次第に大きくなる。  だが、それに反比例するように、体が拒否反応を起こして、まるで金縛りにでも遭ったかのように、硬直してしまう。 「行きたくない……」  オレの名は富山朝日(とやま・あさひ)。富山県出身じゃないけど、富山って名前。朝日って言う名前だけど、毎日、朝日が昇る前に、仕事に出掛けている。  いわゆる社畜だ。  三流の私立大学を出て、食品の宅配会社に辛うじて入社した。  少し高級な食材を、市内のに届けて回る仕事だ。  別に、そういう仕事がしたいと思って入った訳じゃない。  100社近く受けるものの、ほぼ全敗。学歴なんて関係ないっていうけど、あれはウソだ。  やっとの思いで入った会社は、初日から地獄だった。 「ピッキング」という、響きからするとスリみたいな仕事を朝から晩までやらされる。  要は、入荷した食材をひたすらお客様の注文分に仕分けするという仕事だ。 「あはは、大丈夫だよ。そのうち慣れるから~」  そう言う先輩の眼は笑っていない。  そして、ピッキングのない日は、配達に出掛ける。  たった一人で、4トントラックを運転し、50軒以上回るのだ。  むろん、休憩などない。休憩をすれば、その分、帰社するのが遅れ、遅れた理由を厳しく詰められる。 「おめー、大卒のくせに、使えねえな。さっさと動けよ!」  鈴村が、怒声を浴びせて来る。 「はい、すみません」  激しい肉体労働と、年下に罵倒されるという精神的な屈辱にひたすら耐えながら、なんとか一年頑張った。  だが、なぜか一年目の今朝、体が動かない。  今日は、新しい地域の配達の日だからかもしれない。  慣れていないルートの配達は、とかく遅延しがちだ。  怒鳴られて、なじられて、ボロボロになるのが目に見えている。  気が付いて天井を見ると、涙がこぼれていて、枕が濡れている。 「……おかしい。どうしちまったんだ、オレは」  ベッドから降りることができない。
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