しかしMPが足りない!2.5

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黒板の上に据えられたスピーカーにノイズが走る。驚いたオレとクレハは同時にスピーカーの方に目をやる。しばらくフリーズした後、二人で目を見合わせる。 「き、気のせいだよな」 「そ、そうだよね」 聞き間違えというか、機械の故障というか……そう、気のせい気のせい。気のせい……だよな? このまま何事もなかった振りしてとっととこの教室を出よう。何もなかった、何も聞こえなかった。クレハの手を引いて一歩踏み出す。 再びノイズが走った。 「ひっ!」 クレハが短い悲鳴を上げた。オレも思わず声が漏れそうになるのを必死でこらえる。 ノイズは次第に増え、繋がり始めた。 「し、しょー!?なにこれ!?」 腕にギュッとしがみついてくるクレハが悲鳴に近い声を上げる。クレハがテンパってくれてるおかげでギリギリ正気を保てている。一人だったら今頃窓突き破ってでも脱出しているところだった。 「だ、大丈夫だ、クレハ。落ち着け、落ち着くんだ。まだ慌てるような時間じゃない。勝負はまだ終わってない。諦めたらそこで試合終了なんだ」 「……何言ってるの、ししょー?」 若干引いたクレハが少し冷静に戻る。 スピーカーからは途切れ途切れの、低く遅いメロディーが流れ始める。この教室の雰囲気も相まってかなり不気味だ。しかしなんだろうこの音楽は。何かが始まりそうな……。 『……えー、深夜の学園ラジオへようこそ。リスナーの皆さんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか』 「……」 「……」 低い声。ゾンビ映画とかのゾンビ役にいそうなしがわれた声。それなのに聞き取りやすいのが妙に腹立つ。 『実は今日面白いことがあってですね、朝起きたら十時過ぎてたんですよ。これは遅刻だって大慌てで準備してから思い出したんですよ、まだ夏休みだってね。どう、面白いでしょ?』 ……くそつまんねー。仮にでもラジオ番組気取ってるのならもっとまともな話しろよ。色んな意味で冷めたわ。 「ししょー、今のって面白いの?」 「顔も名前も知らない人に気を遣わなくていいんだぞ」 『では早速最初のコーナーにいきましょう。こんな夜の学園は嫌だ、のコーナー。先週応募したリスナーの皆さんから面白いお便りがたくさん届いています。早速読み上げていきましょう』 なんかコーナー始まったし。 『最初のお便りは、ラジオネーム朝はナン派さんから。こんな夜の学園は嫌だ、暗くて黒板の文字が読めない。あぁ、これは嫌ですねぇ。なかなかエッジの効いたお便りありがとうございました。朝はナン派さんには番組オリジナルステッカーを差し上げます』 「くそっ、どこからツッコんでいいのか分からねー!大喜利っぽいけど回答全然面白くないし、全然エッジ効いてねーし!ラジオネームはちょっと面白いし!オリジナルステッカーってなんだよ!」 「し、ししょー?」 気のせいじゃなければクレハが若干引いてる気がする。
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