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「クレハちゃん、宿題は後どれくらい残っているんですか?」
「えーっと……」
クレハは顎に手を当てて天井を見上げた。そして指折り数える。
「計算ドリルに自由研究と工作、それから絵も描くでしょ?あっ、あと読書感想文も!」
……うーむ。夏休みの宿題一休鑑定士のオレの見解としては、手を付けた痕跡が見られませんね。というか夏休みの宿題ってどこも変わんないんだな。
遥も察してか、恐る恐る訊ねる。
「クレハちゃん、終わった宿題はあるの?」
「絵日記は終わった!」
「なんでそれが最初に終わるのかしら……」
遥は頭を抱える。
「うち、未来予知できるから!」
ドヤ顔でクレハは答えた。なるほど、今はそういう設定にはまっているのね。
「光さん、どころから手を付けましょうか?」
「なんでオレに聞くんだよ。……まぁ、無難に手っ取り早い計算ドリルとかかな。絵はクレハが好きに描けばいいし、工作も手伝えるな。問題は自由研究と読書感想文か……。何かやりたい研究とかあるのか?」
「ない!」
胸張って答えることじゃないぞ。
「……読む本は決まってるか?」
「ミゲル君!」
おいどうやってミゲル君で読書感想文書くんだよ。書けるなら逆に見てみたいよ。
「読む本ならクレハちゃんのお母さんから預かってきてるよ」
そう言ってリオはどこからともなく本を取り出す。……いや本当にどこから取り出したのか分からないけど、今は触れないでおこう。
流石クレハのお母さんと言うべきか、本は分厚くないし表紙もどこかで見たことあるようなキャラクターだ。本のタイトルは……『空と海と大地』か。
「……これテトラくんじゃね?」
「ししょー、テトラくん知ってるの!?」
「知ってるも何も、この前王都でパレードしてた時のマスコットだろ?あれって超大作じゃなかったか?」
そう訊ねると奏多は満足げに頷く。
「原作はそうですが、これは子供向けなので読みやすいと思いますよ。私もこの本が面白くて原作に手を出しましたから」
「だってさ。これならクレハも読みやすいんじゃないか?」
「うん!」
興味を持って読めるのならこの課題はクリアしたと言っても過言じゃない。となると後は……。
「自由研究を何にするかだな……。参考までに隼人は何やったんだ?」
「魔法力学と生態系に与える影響」
「ごめん、聞く相手を間違えたオレが悪かった。遥は?」
「あ、あたし?あたしはえっと……」
何故か隼人の方をちらちら見ながら頬を赤らめている。うん、深く聞くのはやめよう。きっとオレが最強のアサガオを育てるために観察を続けたあの日々の対象が隼人に変わっただけだ。対象が人になるだけで犯罪になるんだから世の中不思議ね。あと怖いね。
「奏多は?」
「私は毎日が自由研究です!」
「なるほどそうですか。どうだクレハ、参考になったか?」
「えっ、何が?」
クレハにしては珍しくまともな反応だ。確かに誰一人として参考になることをしてないし、参考になるような成長の仕方をしていない。オレたちを参考にする方がクレハたちにとっては不健全だ。ここは全面的に協力してやらんと。
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