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「……終わったー!」
握っていたペンを机に放り投げる。前のめりになって凝り固まっていた体を背もたれに預け、伸びをして全身をほぐす。何時間も机にかじりついたせいで解放感が凄まじい。いや、解放感の原因は伸びをしたからだけじゃない。
「ようやく終わりましたか!じゃあさっそく遊びに行きましょう!」
「ちょっと待て。もうちょい余韻に浸らせてくれ」
向かいに座っていたピンク色の髪をした少女、四季奏多はそう言いながら身を乗り出した。まるで散歩の時間を待ちわびていた犬みたいな反応だ。
オレが手で静止すると、頬をわざとらしく膨らませて不満そうに座り直した。
「あんたこれだけなのに随分掛かったわね」
「これだけって……結構あっただろ」
興味無さそうに会話に混ざって来るのは、オレの右斜め前方の席に座る神代遥。綺麗な金髪とエメラルドグリーンの瞳が端正な顔立ちをさらに引き立てている。
そしてオレの右隣に座る茶髪のイケメンを凝縮したような男は一宮隼人。興味が無さそうというか、オレたちの会話が聞こえているのかも不安になるくらい手元の本に視線を落として動かない。時折ページをめくっているから、生きてはいるみたいだけど。
オレと隼人が住む寮のリビングに集まったこのメンツ。普段からこのメンツで過ごしているけど、今日は特別集まってもらった。いや、集めた、が正しいか。
さっきまで書き殴っていたノートを閉じる。それと一緒に広げていた参考書やらなんやらも片付けて、結露して小さな水たまりを作っているコップに入った麦茶を流し込む。
んー、やっぱり夏といえば麦茶ですわ。
解放感の原因、それは……。
「夏休みの宿題くらい、直ぐに片付けなさいよ。あたしたちが手伝わなかったらどうするつもりだったの?」
「すんません……」
深々と頭を下げた。
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