しかしMPが足りない!2.5

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そう、夏休みの宿題である。王都での一件から約二週間、夏休みも中盤戦、オレは一向に進まない宿題の数々に悪戦を強いられていた。 というのも、オレ、七辻光がこの世界に来てまだ四か月ちょっと、言語や一般教養がこれまで学んでいたものと大きくかけ離れているからである。夏休み前最後の試験こそ無事に乗り切ることができたが、それでも学年で下から二番目。夏休みは時間があるとはいえ、とても一人では処理しきれないと判断し、数日前から助っ人を頼んでいたのだ。 「でもさ、この時期に終わらせたんだからいい方じゃないか?」 「そうね。最終日に泣きつかれても見捨てたしね」 相変わらず辛辣だ……。冗談じゃないというのは付き合いが短いながらも理解できる。 「そういう遥はいつ終わらせたんだよ」 「あたしはカナちゃん家行く前に」 遥は自慢げに鼻を鳴らした。奏多ん家行ったのって夏休みの序盤も序盤だし、実質三日くらいで終わらせたってことかよ。 「……お前夏休みの宿題に恨みでもあんの?」 「馬鹿なこと言わないで。面倒なことは早く終わらせたいだけ」 まぁ、遥らしいといえば遥らしいが。オレも夏休みの宿題といえば、前半に畳み掛けて中盤に休んで終盤にのらりくらり終わらせる、って戦法だったしな。最終日に全てを懸けるやつだっているし、そう思うと性格が結構出るのかもしれない。 「奏多はいつ終わらせたんだ?」 そう訊ねると、何故か奏多は恥ずかしそう後頭部を掻いた。 「実は私、まだ終わらせていないんですよね」 「意外だな」 どちらかといえば遥と似たようなタイプだと思っていた。でも学力的には最終日まで持ち越しても戦えると踏んでの選択か……。 「まとめてやるのは疲れちゃうので、ちょっとずつ進めているんです。なのでギリギリに追い込まれることもないですが、早めに終わることもありません」 なるほど。だから『まだ終わっていない』じゃなくて、『まだ終わらせていない』なんだな。しかしそれならオレの勉強を見てくれている間に一緒に進めちゃえばよかったのに……なんて言うのは無粋か。奏多が計画して進めているならオレが口を出すまでもないだろうし。
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