しかしMPが足りない!2.5

5/22
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「それで光さん、何して遊びましょうか?」 どんだけ遊びたいんだよ、こいつは。犬だったらきっとしっぽをブンブン震わせているんだろうな。まぁかなり手伝ってもらった恩もあるし、付き合ってやらないわけにはいかない。しかし……。 「遊ぶと言ってもな……」 お日様は今日も元気にカンカン照り、とても外に出る気にはならない。奏多は暑さなんて気にしないだろうから、それだけは阻止しなければ。 「鬼ごっことかどうでしょう?」 「ある程度予想はしていたが、年頃の女の子が提案する遊びじゃないぞ」 「じゃあかくれんぼですか?」 「大差ないだろ」 「なら、ほかにやりたいことあるんですか?」 そう聞かれるとやりたいことなんて特にないからなぁ。屋内でできること、部屋の中でも楽しめる遊びか……。 「……ミゲル君とか?」 「あんただって子供みたいな提案してるじゃない……」 遥は呆れたように頭を抑える。否定できる要素がない一つとしてないのが悔しいところだけど、実際部屋でできる遊びなんてミゲル君くらいしか思いつかない。トランプは何か理不尽にルール違うから嫌だし。こんな時テレビゲームとかあればいいんだけど、生憎この世界には存在していない。 「私はミゲル君でもいいですよ、光さん!」 「奏多、嫌な時はちゃんとノーと言える人にならないと将来苦労するんだぞ?」 「私は嫌じゃないですよ?」 なんだこいつ。断ることを知らないというより、退屈を知らなそうだ。逆に怖い。 「やるならあたしも参加してあげてもいいけど、その代わり用意は光がしてよね」 「なんで遥もちょっと乗り気なんだよ」 「暇つぶしよ。そんなことよりやりなら取ってきてよ」 ミゲル君愛され過ぎてちょっと嫉妬するレベル。もしくはこの世界娯楽がなさすぎる説。 奏多も遥もやる気なら、オレが断る理由もない。さて準備でもするかと立ち上がろうとしたところで、体が止まる。 「この部屋にミゲル君無いぞ?」 「そんなの知ってるわよ。だから図書室まで取りに行ってきて」 「結局外に出るのかよ……」 室内でできると思ったからミゲル君提案したのに、外に出るのなら何の意味もない。 「……ミゲル君はまた今度にしないか?」 「えー!?」 「……あんた外に出るのが嫌なだけでしょ?」 ジト目で睨まれた。そんな簡単に図星突かないでください。 「いやだってほら、オレ日焼けとか気にするタイプだし」 「なら先に焼けていれば問題ないわね。カナちゃん、お願い」 「あいさー!」 遥の問い掛けに、奏多は敬礼して元気よく返事をする。一体何をしようというのか、考えが追いつくよりも先に奏多は満面の笑みを浮かべたまま、右手に火の魔法を創造した。手のひらサイズの小さな火の塊だけど、熱はオレのところまで届く。 「……ちょっと待て遥。何をさせようとしている」 「日焼けが気にならないように先に焼いてあげるんじゃない」 「本当に焼いてどうする!普通に火傷するわ!」 「でも同じ“焼け”でしょ?」 「全然ちげーよ!わ、分かった取って来るから!だから焼かないで!」 必死の訴えかけが届いたらしく、奏多は魔法を消した。人を本当に焼こうと思う遥もやべーが、その考えを一瞬で察した奏多もやべー。涼しい室内なのに変な汗かいたわ……。 「じゃあお願いね、光」 遥の浮かべる笑顔に恐怖以外の何かを感じたいよ、切実に……。 わざとらしくため息を吐いて、立ち上がり、コップに残った麦茶を一気に飲み干す。往復で三十分も掛からないだろうけど、その頃にはぬるくなって美味しくなくなっているだろうしな。 重い足を引きずって廊下に続く戸を開けると丁度、玄関を叩く音が聞こえた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!