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その音はテーブルでのんびりしようとしていた面々にも聞こえたらしく、様子を窺うようにオレを見る。どうやら誰も思い当たる節はないらしく、顔を見合わせては首を横に振る。最終的には再度オレに視線が集まり、隼人は顎で促した。こういう役回りだということは理解してはいるけど、頼むの一言くらいあっても良いと思うんだ、オレは。
またしてもため息をつき、大人しく玄関へと向かう。奏多と遥以外に、この部屋に来客なんて珍しい。珍しいというか、思い返してみれば他に誰も来たことがないな。だとすると誰だろう。本命はキンタあたりか、それで対抗に逢坂と金剛寺、大穴で中西先生だな。
再びノックをされる。こっちにも催促されるとは、とんだ板挟みだ。
「はいはい行きますよー。どちら様ですか、っと」
鍵を外し、玄関ドアを開く。外の熱気が吹き込んできて思わず顔をしかめた。こんな暑いのに図書室まで行かせようなんてする遥はとんだ悪魔だな、なんて思ったがどうだろう、誰もいない。
一瞬いたずらかと思ったが、そうじゃない。いないんじゃなくて、見えてなかった。視線を少し下げると、赤い癖毛の女の子と、長い青髪の男の子が立っていた。
「クレハにリオ、こっちに来てたのか?」
「ししょー、すげー!」
開口一番何を言うかと思えば、背伸びをして呼び鈴に伸ばしていた手を引っ込めて、目を輝かせてそう言った。
「リオもそう思うでしょ!?」
「う、うん。ちょっと驚いた」
「なんだよ急に、驚いたのはこっちだって。来るなら連絡くれればいいのに」
クレハとリオは不思議そうに顔を見合わせた。
「カナタに手紙出したよ?ほら返事の手紙も」
そう言って小ぶりのバッグから手紙を取り出し、手渡される。中身を確認すると、確かに奏多の文字だし、丁寧にこの寮までの地図と部屋番号まで書いてあるし。……というかなんでナチュラルにうちの部屋番号を教えてんだよ。
思わず三度目のため息が零れた。あいつ、全く知りませんみたいな顔しやがって。
「でも遊びに行くって言ったよね?」
「……そうだな」
まぁ確かにそんな会話をした記憶はある、色々あって忘れてたけど。それに別に歓迎していないわけじゃない、わざわざ遊びに来てくれたのならそれは純粋に嬉しい。
「とにかく入りなよ。暑かっただろ?」
「うん!」
二人は笑顔で頷くと、部屋に駆け込んでいった。
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