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「わぁ、涼しい~」
クレハは部屋に入るとティシャツをハタハタさせて笑みを浮かべる。数十秒外に熱気にさらされただけで嫌な思いをしたのだから、これまでの道のりを考えると笑顔になるのも自然だ。そしてやっぱり外に出ないことを誓った。
短い廊下を抜けて三人のいるリビングに戻ると、意外な訪問者にそれぞれの反応を見せた。
「あれ?クレハちゃんにリオくん、こっちに来てたの?」
分かりやすく驚いて見せたのは遥。玄関先でオレも同じ反応をした。
「姉御!お久しぶりです!」
遥の姿を見つけるとクレハとリオは深々と頭を下げた。そんな二人を見て遥は苦笑いを浮かべる。
「人前ではやめようね……」
子供は素直だからな、恐ろしい存在だと認められちゃってるからしょうがない、なんて言おうものなら埋められるから言わないけど。
「光、誰だそいつ」
珍しく歓迎の言葉でも投げかけると思いきや、飛び出したのは大変失礼な台詞。
「おいおい忘れちゃったのかよ、奏多の実家に行った時に遊んだクレハとリオだよ」
「そうじゃない……いや、なるほど。理解した」
隼人は怪訝そうな表情を浮かべたが、直ぐに何か納得したように何度も頷いた。
「理解?」
「何でもねぇよ」
変な隼人。明日は雪でも降るのか?
「クレハちゃん、リオくん、遠路はるばるよく来ましたね!」
「きたー!」
心待ちにしていました、みたいな台詞を吐いているところ申し訳ないが、二人がこの部屋に入った時にはっとした表情を浮かべたのをオレは見逃してないからな。
「おい、奏多」
「えへへ、何でしょう?」
「……今正直に話せば許す」
「来るのすっかり忘れてました!」
笑って誤魔化し、全く反省の色が見えない奏多をどう叱ってやろうか考えているとそれを遥が遮る。
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