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「それにしても丁度いいタイミングで来たわね。丁度暇になったところなのよ、光が」
「倒置法でオレを強調するな」
どうしてそう簡単に人を売ろうとするのかしら。ろくな大人になれないぞ。
しかしそんなことはお構いなく、遥の言葉を都合よく聞き逃すはずもないクレハはキラキラと目を輝かせてしまう。
「ししょー暇なの!?じゃあさっそく遊ぼう!」
まぁ当然そうなりますよね。わざわざ来てくれた以上無下に扱うつもりもないけど、しかし釈然としない。かくなる上は……。
「おっとクレハ、舐めて貰っちゃ困るぜ。オレたち全員、夏休みの宿題を片付けて退屈してたところなんだ」
「ほんとに!?」
「光さん!私はまだ終わってません!」
「じゃあ奏多は居残りな」
「くっ……!なんて卑怯な手を……!」
わざとらしく苦々しい表情を浮かべるが、どうせ奏多のことだから遊びを断るわけがない。むしろ宿題を容赦なく切り捨てるタイプだ。
「ちょっと光、あたしは……」
「おっ、どうした遥。隼人も一緒に遊ぶけど、用事があるならまぁ仕方ないな。そっか、隼人も来るのになぁ」
「俺は」
「馬鹿言わないで。地の果てまで行くわ」
気だるげな隼人の言葉を遮ってそう宣言する。遥の扱い方なんてこの通り、手のひらの上でワルツを踊らせることくらい朝飯前だ。別に地の果てまでは来なくていいけど、というか怖いからそんなに追いかけて来ないでください。
そして隼人はというと、遥に遮られたせいか、もう否定する気力を残っていないようで、諦めて再び本に視線を落としている。
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