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「ねぇ、どうしたの」
「ん? うーん、これ、切り取って大事に懐に入れて持ち歩く、ってどんな気分かなぁ。って見てた」
「え、フェラしてくれるんじゃなかったの?!」
「あ、うん。するつもりだったよ。でも元気なくなっちゃった」
「そりゃそうでしょ。切り取るって怖いこと言われたら」
「うん、俺も想像したら元気なくなる」
「……もう。どうしたんです?上にあがってきて。顔見たいから」
「……ん」
「で、どうしたんですか。妙なことを言い出して」
「ああいう事件あったじゃん」
「そうですね。どれくらい昔のことか知らないけど。女の人が持ち歩いてたのは知ってる」
「もしコータが死んだら、俺どうするかな、と思って考えてたら事件のこと思い出しちゃった」
「でもなんでこれ」
「だって俺を一番愛してくれてるモノじゃん」
「俺は全身全霊であんたを愛してるよ」
「ぷふふ。コータはどうする、俺が死んだら」
「え」
「身体の一部を取っておける、ってなったらどうする?」
「一目惚れしたのはあんたの顔だけど…でも生首持ってるのもなぁ。ってか、先に死なないでよ」
「……」
「……っ?」
「………ぁ、………っ、ん、ふ」
「…………」
「…………」
「……っ」
「…ん、っはぁ」
「突然、えろえろちゅーしてどうしたの」
「うん…キスできてセックスできるの、いいなぁと思って」
「ほんとに今日、どうしたの」
「考えちゃうんだぁ。
コータと俺は一緒に住んでるし、パートナーシップの手続きもしたし」
「そのために引っ越したしね」
「うん。嬉しいよ。
でも、出会ったばかりのカップルってどうしてるのかなぁって」
「?」
「手をつなぐのも、ちょっと、さ。マスク外してキスするのも、ましてやセックスなんて、リスクが高いじゃん」
「………そんなこと、考えてたの?」
「うん。もしかしたら思わぬことになるかもしれないじゃん。精一杯気をつけてるけど、いつ俺が死ぬかわからないじゃん」
「言うなよ」
「でもリアルじゃん。気をつけても気をつけても、どうにもならないことじゃん」
「……」
「だからさ。コータとこうやって抱き合ってキスしてセックスできるのがとっても幸せだなぁって噛みしめてる」
「……はぁ、あんたねぇ」
「うん?」
「俺がどれだけ落ち込むか、知ってるでしょ」
「うん。でも今日言っておきたくて」
「俺、今日のセックスめちゃめちゃ楽しみにしてたのに」
「俺もだよ」
「こんなの聞いたら勃たないよ」
「じゃあ、抱き合って眠ろう」
「眠れる気がしない」
「じゃあ、ずっと二人で起きておこう」
「あんた、たまにやたらとロマンティックで楽天家だね」
「こういうところと顔に惚れたのは知ってる」
「ちくしょー、その通りだよ」
「はははははは、愛してるよコータ」
「俺も愛してる」
「ん」
「……ててて、痛い痛い。力強すぎ」
「だって」
「泣くなよ」
「だって」
「明日のホットサンド、アボカド入れて」
「え」
「チーズとハムも入れて」
「俺、アボカド嫌いなのに」
「入れてー」
「その前に俺をあんたにぶち込んでやるっ」
「ふふふ、ヤル気になった?」
「足腰立たなくしてやる」
「あ、元気出てきてる。ごりごりしてる」
「ねぇ、フェラして…よ」
「うん、いいよ」
おしまい
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