初恋の忘れ物

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「奈々美!」 後ろから走って来た人に腕を掴まれた。 あの頃より少し低くなっているけれど、私の事を奈々美と呼ぶのは、拓馬くんしかいない。 「拓馬くん…」 「全然、話に来てくれなかったのは、会いたくなかったから?」 「私、足を怪我して座敷に座れないから…」 「怪我?」 「1年くらい前に交通事故でね。拓馬くんは元気そうだね。仕事で転勤して来たの?」 「奈々美に会いたくて、仕事辞めて引っ越して来た。」 「へ?」 「いくら遠距離だからって別れるべきじゃなかったって後悔した。会社辞めて独立する事になって、もう一度奈々美に会いたくて、こっちに事務所構えようと思ったんだ。 奈々美は、いま付き合っている人はいるのか?まさか結婚とか…」 「してないし、彼氏もいないけど。」 「じゃあ、改めてアプローチさせてもらうから、覚悟してくれ。」 「た、拓馬くん。二次会に行かなくて良かったの。」 「みんなに言って来た。奈々美に会いたくて戻って来たし、これから告ってくるって。だから、このまま2人でどこかへ行かないか。」 「良ければ私のアパート行く?」 「いいな。一晩かけてゆっくり話をしよう。」 『ねぇ、覚えている?八坂拓馬くんのこと。』 いまならちゃんと応えられるよ。 うん。大好きな人だもの END
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