初恋の忘れ物

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私と拓馬くんは、みんなと会う事がない私の自宅付近や少し離れた街で会うようにしていたから、席替えで離れた後はただのクラスメイトのように学校で振る舞っていた。 「奈々美、俺ちゃんと付き合っているって言いたい。」 「だ、だめだよ。私、吊し上げられちゃう。」 「ちゃんと俺が守るから。」 「お願い。言わないで。」 「俺は同じ学校なのに、一緒にいろんなこと出来ないんじゃつまんねーよ。」 「ごめんなさい…」 そんな私たちの交際は、誰にも知られないままクリスマス前に拓馬くんのご両親の離婚による転校であっけなく終わってしまった。 「奈々美、ごめん。俺、遠距離は自信ないし、奈々美みたいな秘密主義についてけないから。」 拓馬くんからそう言われて、私たちのたった2ヶ月あまりの交際は、苦い思い出になった。
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