初恋の忘れ物

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結局、断るつもりでいたのに忙しくて断り忘れた私は同窓会会場の居酒屋の前に立っていた。 「あ、奈々美?久しぶり。」 「奈帆ちゃん?」 「うん。」 奈帆は、去年同じ会社の先輩と結婚したけど、奈帆の結婚式のひと月ほど前に交通事故に遭った私は、出席できなかったから会うのは久しぶりだ。 「ごめんね。結婚式に行けなくて。」 「ううん。それより大丈夫なの?」 「うん。なんとかね。」 右足が少し引きずるようになったが、生活にも仕事にも困っていない。 高校のすぐ近くで一人暮らしをして、このままお一人様で過ごすつもりだし。 私たちは少し遅れたせいか、もう同窓会は始まっていた。 幹事の加藤くんに参加費を払い、メイングループに突き進んでいく奈帆と別れ、空いている席を探して座敷からあぶれた組のテーブル席に座った。 私的に椅子の方がありがたいし。 「相良さん?」 「え、えぇ。えっと島田くん?」 「久しぶり。いま、何やってんの?」 「高校で歴史の教師です。島田くんは。」 「市役所にいるよ。それで八坂が引っ越して来た時に会ったんだ。」 「そうだったんだ。」
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