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序章・二〇二一年 春
第一節
四月を迎えても北海道の内陸部や日本海側は雪の降る日が少なくない。
この日も午後から曇りがちになり、原田恭子が病院の会議室から外を見ると粉雪が舞い始めていた。恭子は院長と事務長以下居並ぶ幹部たちを前にひとり向き合って座っている。重々しい口調で院長が恭子に語りかけてきた。
「今、振り返れば、確かにあのような事態を避けるのは非常に難しかったとは思います。ですが、事態が一旦収束したとは言え、何事もなかったように済ませるわけにはいかないんですよ。それはご理解いただけますよね」
「もちろんです。責任は私にあると思っています。責任者を処分してこそ病院が刷新されたと地域に示せることも理解しています」
「私どもとしても原田さんの長年の功績を思うと誠に忍びないのですが…」
「しかし、療養型病床を一気に半分に減らすのはいかがなものでしょうか?手前味噌を承知で申し上げますが、高齢者介護こそ当院の価値を高めてきたわけですし」
シルバーメタルの眼鏡の中で瞳を冷たく光らせながら事務長が口を開いた。
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