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スケルトン、ダンジョンをクビになる
「フハハハハ! 遂に復活したぞ。勇者に倒されて幾数百年、漸くダンジョンに返り咲いたぞ!」
ダンジョン最下層の守護者で有った、ネクロマンサーの主が復活した。
滅びから免れて少しずつ魂を復元し、数百年かけて再生した。
だが、代償は高くついた模様。
主が不在だったダンジョンは崩壊こそ免れていたが、内包していた魔力は激減して各階層に居た、守護者の魔物達は復活していない。
今のダンジョンに残って居たのは、私を含めた雑魚ばかり。
勇者に偶々遭遇しなかったか、或は取るに足らぬと見逃されていたかの、どちらか。
全盛期の力を取り戻すには大量の魔力を集めなければならない。
それには、冒険者と呼ばれる者達から奪う必要がある。
勇者の様に桁外れの魔力を持ってはいないが、中級や上級の冒険者ならばそれなりの魔力を持つ為、ダンジョン内に沢山居れば其れだけで大量の魔力を吸い出せる。
しかし、主が勇者に倒されてからは冒険者達がこのダンジョンに訪れなくなり、魔力は減る一方だった。
「やはり、魔力が枯渇しかかっていたか。おい、其処のお前、今ダンジョンに残って居る一番強い魔物は誰だ?」
主が私達に気付いた様で、私の隣に居たミノタウロスに話しかけてきた。
「恐らく我輩だと思われます。各階層の守護者は全員、復活されておりませんので」
「仕方あるまい。我の復活に魔力を殆んど費やしたのだからな。お前が上層の守護者代行となれ。眷属が居るならば連れて来い」
「バッファロー達が居ります。只今連れて参ります」
ミノタウロスは最下層から退去した。主は残った私達を一瞥する。
「残った者達はこのダンジョンより立ち去れ。ダンジョンの維持と階層守護者の復活に必要な魔力を捻出するには、お前達は邪魔だ」
主は何事か呟くと、私達の足元に魔方陣が浮かび上がった。
そして、パキンと音が鳴ると魔方陣が壊れ、主との繋がりが無くなる。
「餞別だ、残っていた隠し部屋に有る宝箱の中身はくれてやる。二度とこのダンジョンに戻ってくるな」
再度、元主が何事か呟くと、今度は巨大な魔方陣が私達の足元に浮かび上がった。
そして、一瞬で視界が変わり私達は、ダンジョンの外と思われる洞窟の前に居た。
幾つかの、蓋が開けられた状態の宝箱が私達の近くに有り、誰からともなく無言で宝箱の中身を持ち出して立ち去っていく。
私はその光景をぼんやりと眺めており、いつの間にか残って居たのは私と、手足の無いスライム達だけとなっていた。
「そうか、私はダンジョンをクビになったのか」
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