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不自然な洞窟
元主に召喚され、元主が復活する迄の数百年間居たダンジョンから追放された私は、宝箱に残っている中身を確認する事にした。
「スライム達が使えそうな物は無さそうだな。この鞄は恐らくマジックバックだろう。これに残りを全部入れておこう」
私は鞄を宝箱から取り出して他の物をマジックバックに詰め込んでいく。
空になった宝箱は大き過ぎて入らない為、放置した。
私が移動すると、スライム達は私の後を着いて来た。
日頃から廃棄物処理に利用していたのだが、エサやり係と勘違いされていた様だ。
団体行動になると目立ってしまう。仕方無しにマジックバックからアイテムを取り出す。
それは魔物使いが利用している格納ブレスレットだ。
一種限定で、ドラゴン並みの巨体ですら入れる事の出来る優れものだ。
自分の腕に装備すると、収縮してピタリと引っ付く。
「この中に入れ、移動中は目立ちたくない」
私がしゃがんでブレスレットをスライム達に近付けると、一匹ずつブレスレットに触れて中に入っていった。
数十匹居たスライム達が全て収まり、私は充てもなくさ迷い始めた。
どうやら近くに冒険者は居らず、村や町、都市も無かった。
私は日中、身を潜めて夜間の間だけ移動する様にしていた。
幸い、宝箱に残っていた雨避けのマジックマントを装備しているので、遠目からは冒険者に見えなくもない。
すれ違うのは今の所、この近辺に生息していた動物だけだったが、魔物が徘徊していれば冒険者の餌食となるのは目に見えている。
私は喋れはするが、只のスケルトン。
ブレスレットに居るスライム達が束になった所で、魔法で一掃されるのが落ちだ。
便利なのは空気中の魔力を取り込むだけで、不眠不休で活動出来る事くらいか。
スライムに至ってはブレスレットに入っている間は、休眠状態となり食事の必要がない。
たまに見かける動物の死骸や、落ちている木の実等があれば与えている。
ダンジョンに居た時は、壊れた鎧や剣も消化していたので、何を与えても問題はないが、冒険者の死体を与えた時は率先して肉体を消化していたので、多少の好みは有る様だ。
ダンジョンから離れて数週間、似た様な洞窟を見つけた私は、此処を根城にする事を決意した。
「今日から、此処が私達の拠点だ。日中はこの洞窟で隠れ、夜は周りの散策に出掛ける。二匹で一組に別れて、気になる物や冒険者を見掛けたら一匹が見張りに、もう一匹が報告に戻って来てくれ」
ブレスレットからスライム達を出してそう話した。
言葉を話す事は無いが、身体を動かして意志疎通は可能だ。
私は洞窟内を調べ、他の動物が住みかにしていないか確認する。
足跡は無く、誰も立ち入った様子はなかった。
奥行きがあり、先に続いている。
「中々広いな、掘り出し物だ」
枝分かれはしておらず、緩やかな下り坂を進み続ける。
暫くして、行き止まりにたどり着いた。
「不自然なほど長い洞窟だ。ワームが掘り起こしたとしても、枝分かれしていないのがおかしい」
地上に出たワームがたまに、崖を掘り進めて住みかにする事があるみたいだが、その場合は枝分かれして道が複数になる。
それに、掘り進めている途中であれば、ワームに遭遇していなければならない。
だが、行き止まり迄ずっと道しかなかった。
「もしかして、若いダンジョンなのか?」
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