終末日和【ユフの方舟4】【他シリ未読OK】

1/8
前へ
/9ページ
次へ
「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」  朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターがいつも通り、期限を告げた。そしてその放送は、いつもと少しだけ異なった。 「このキャストでお送りする放送は本日で最後となります。明日からはAIによる自動放送となりますのでご了承ください。皆様良い終末を」  その時ちょうど、ピッと鋭い音が響く。コーヒーが入った。  腰を上げてサーバを取り上げ、温めたミルクを入れた大きめのカップにぐるぐると注げば、グァテマラ特有な甘く香ばしい匂いが広がった。そして近づけ過ぎた眼鏡が曇る。  世界の終わりの予告が始まってちょうど一週間。いや、正確には十日なのかな。その終わりの始まりは、最初はちょっとした天文ニュースとして現れた。  地球の近傍でその隕石は突然検知されたらしい。その発見は一人の天文マニアからもたらされ、その事実は報道ニュースよりも先にネットの掲示板に疑問という形で投げ込まれたものだから、世界が隠蔽する隙もなかったのだ。そしてその隕石は地球と確実に接触すると言う。  世界は狂乱に陥った。  その隕石は真っ直ぐ地球に向かって直進していて、例えば昔の映画よろしく今更何かをぶつけて軌道を逸らすと言うことができないほどの速度をもって、すでに間近に迫っていた。衝突は必至だ。その隕石はユフと名付けられ、落下地点はある小国北部の山であると推測された。  たった一回の接触で恐竜を絶滅させたチチュルブ・クレーターよりもさらに大きく、その直径は30キロを越えた。そして更に悪くその入射角は地軸にほぼ垂直に地球だ。つまりユフは神の鉄槌のように真っ直ぐ降り落ち、地中深くまで地球をえぐり、全てに滅びをもたらすだろう。  この話のどこまでが真実かはわからないが、様々な憶測と推測はまことしやかに囁かれ、宗教団体の終末論とともに世界は混沌に包まれて、その最後の三日間は狂乱のままに過ぎ、そしてその最後の日にユフは地球に突入したが、地球が真っ二つに割れることはなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加