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それはおそらくユフの組成によるものだろう。
硬いと思われた外装は大気圏突入によって燃え尽きて、ソニックブームを起こしてたくさんの窓をぶち割り破片をふりまいたものの、最終的にはその内部の液体だか気体だかといった柔らかいものが落下地点にぶちまけられただけだった。
地球人類は胸をなでおろし、そしてユフの成分の検証が行われることになった。けれども、調査に行った者は尽く帰らなかった。そしてその落下地点の近くから歪んだ同心円状に通信が繋がらない国が増加していった。衛星写真では、それらの国で路上や公園といったいろいろな場所で人々が倒れている様子が写された。
結局人類滅亡は三日から最大数十日長引いただけだったのだ。
ユフはその身で直接地球は破壊しなかったけど、内包していた致死の毒をふりまいた。それは触れることもできない全てを汚染する毒で、地球の表面を流れる風にのってやってくる。地球が自転している以上、防ぎようがない。全世界に終末のラッパが吹き鳴らされたわけだ。
季節風に乗ってこの街に滅びの死者がやってくるのは落下から十四日後、今日からあと七日の後。七日後の夜八時過ぎにこの国東側にある山脈を超えて降りてくると予測されている。
少しでも長生きしたくて最果てに逃げる人もいるけれど、結局それでも数十日。それはもう確定的に逃れられない運命だ。
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