終末日和【ユフの方舟4】【他シリ未読OK】

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 期限は十四日。  終わりが決まってしまうこと、それが目に見えてしまうこと。暴力的な欲求や支配的な欲求は国が排除して三日間で全て潰えた。終わりに耐えられない人も最初の三日間でみんないなくなり、この国の人口は半分くらい、その後の一週間で三分の一くらいに減った。といってもその大半は自殺で、あとは少数の逃げる人。  あとはゆるやかなこの終末になんとか耐えられる人だけが残って生活を継続している。それでも大抵の人は狂乱の三日間を経験して、残り十四日もの間、何もせず家で不安に耐えることはできないと気がついた。そして三日間で疲れ果てていて、みんな平穏な生活を欲しがっていた。  この国は高度に技術が発達してるから、わざわざ働かなくても生きていける。労働は必ずしも必須ではない。けれども何もしないというのは手持ち無沙汰だし知り合いもできないから、ユフが落ちる前も多くの人は興味がある仕事を選んで働いたり、趣味の活動をして過ごしていた。  流石に狂乱の三日間はほとんどの人が働いていなかったけど、結局の所あと十四日となって仕事を再開する人もぽちぽち出てきた。強い義務感で三日間を仕事に明け暮れた人は仕事をやめてかえってゆっくりしているらしいという話も聞く。もともと仕事というものは機械が代替でき、人間が従事しなければならない必要性は高くはない。  終わるから、やりたいことをする。けれども物質的に不足のない生活を送っていたし、やりたい仕事をしてきたから、俺は特に欲しいものもやりたい事もとりたてて思いつかなかった。  だからそれぞれの人が選んだ実現可能な終末の形というのは思ったよりも平穏で、家族で過ごすとか、何かよいことをしようとか、ゆっくりしようとか、結局のところそういった落ち着いた生活が続いている。わざわざ労力を払って精神を削ってまで実現したいと思うものはもとより乏しい。だいたいにおいてVRや映画なんかの疑似体験で事足りるものだから。
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