【2000字掌編】夢の懸け橋は、僕らを繋ぐ

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 雨の日の本屋は、人の訪れもまばらだ。だが霧島自身は、雨音を聞きながら読書することを何よりも楽しみにしている。 「今日もありがとうございました、また明日」  レジにいた霧島は、退勤するパートの女性に挨拶をして見送った。  彼が店主を務める『霧島書店』は商店街にある小さな本屋だ。祖父の跡を継いでからは、お勧めの本のPOPを書いたり、SNSを通じて集客を図ったりして、経営を軌道に乗せた。 「これが僕の夢だったんだけどな……」 「お疲れ様です、店長」  昔を回想する霧島の独り言に、聞き慣れた少女の声が重なる。  くせっ毛の強いショートカットに笑顔が似合う。夜からのバイトの守屋愛だ。今はTシャツにデニムパンツのいで立ちで、店の奥で仕事用のエプロンをすぐ身に着けた。
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