【2000字掌編】夢の懸け橋は、僕らを繋ぐ

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「守屋さん。これ、君が落としたんだろう」  霧島は、先程拾ったカードを彼女に見せる。  愛は驚いた後、軽い悪戯を見つかった子供のように肩を竦めた。 「君だったのか……あの時の女の子は」  このカードは忘れもしない。霧島がまだ祖父の下でバイトをしていた頃、好きな児童書につけていたPOPだ。剣と魔法のファンタジーで、霧島自身もよく読んだロングセラー作品だった。  一生懸命、面白さを伝えるために書いたPOPを、本と一緒に欲しがった女の子がいた。 「僕はあの時16歳だったから……守屋さんは9歳か。懐かしいな、まだ持っていてくれたなんて、ちょっとびっくりしたな」 「だって、店長は私の恩人だから」  愛は受け取ったPOPを、大切そうに掌に包んだ。
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