7人が本棚に入れています
本棚に追加
「守屋さん。これ、君が落としたんだろう」
霧島は、先程拾ったカードを彼女に見せる。
愛は驚いた後、軽い悪戯を見つかった子供のように肩を竦めた。
「君だったのか……あの時の女の子は」
このカードは忘れもしない。霧島がまだ祖父の下でバイトをしていた頃、好きな児童書につけていたPOPだ。剣と魔法のファンタジーで、霧島自身もよく読んだロングセラー作品だった。
一生懸命、面白さを伝えるために書いたPOPを、本と一緒に欲しがった女の子がいた。
「僕はあの時16歳だったから……守屋さんは9歳か。懐かしいな、まだ持っていてくれたなんて、ちょっとびっくりしたな」
「だって、店長は私の恩人だから」
愛は受け取ったPOPを、大切そうに掌に包んだ。
最初のコメントを投稿しよう!