人狼ブラザーズ!

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 村人の中には、占い師と呼ばれる“毎晩一人を占って、狼かそうではないかを見定めることができ、狐を占った場合は呪殺を行うことができる”能力者。それから、前の昼の時間に処刑した人間が狼だったかそうではなかったかを見定めることができる霊能者と呼ばれる能力者。自分以外の人間を一人、夜時間に護衛することができる、狩人と呼ばれる能力者がいる。狼は、これらをうまく掻い潜り、時に自分が偽の能力者であることを騙り、かつ狐を自分達より先に処分するように仕向けながら戦うことを求められるというわけだ。  何が言いたいのかといえば。ナガラ、という選手は強者であるというイメージがついてから、非常に“占い師には占われやすく”、“役職についていなくても噛まれやすい”ポジションになったというわけである。本来ならこれは、本人が勝利を重ね続けるためには圧倒的に不利になるはずだった。が、彼は時に“己が噛まれることも視野にいれて”罠を張ったり、ブラフを撒いて周囲を翻弄するのである。有名になってからもここまで安定して勝利を重ねられるプレイヤーは、かつてのブーム時にもそうはいなかったことだろう。  人狼のプロ選手になれば、プロの競技団体と契約することができて安定した給料を得ることもできる。テレビに出て有名になることもできるし、それこそ世界大会で優勝チームに入ることができれば賞金額も凄まじい。日本人プロ選手としてナガラ選手が有名になると、日本でも次から次へと有望なプロ志望者達が人狼ゲームにのめりこみ、時に専門のスクールに通うようになった。自分達兄弟もまた、そんなナガラ選手に憧れてプロを目指している一人である。 「やっとここまで来たよ」  パソコンの前。僕はふう、と深く息を吐いた。 「人狼の日本大会予選!……この本戦で勝ち残れば、プロから契約してもらえる。僕達の、夢の第一歩だ」  現在高校生の僕と、大学生の兄。僕達は、二人で一人のプレイヤー“ツギクル”である。人狼ゲームは、二人で一つのプレイヤーとして契約することもルール上許されていた。基本はオンライン対戦なので、画面の向こうで二人で戦略を相談することに何の問題もないからである。  画面上には、待機画面が表示されている。予選第一戦の配役は12B。オーソドックスな狐入りの村だということは既にわかっている。
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