人狼ブラザーズ!

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「初めて人狼やった時のことは言うなよな、兄貴。観戦しまくってイメトレしまくって、絶対大丈夫だと思ったのにさ……まさかあんなポカするとは思わなかったんだから」 「ポカしたというか、何もできなかったつーな」 「うっせー!人狼引いたのに初手グレランで吊られるとか一番きっついんだよ!!」  人狼初心者あるある。二日目の(最初の昼時間を初日or二日目と呼ぶのが基本だ)昼時間。考察材料があまりにも少なかったため、話せることがあまりにも少なく(なんせ名乗り出た占い師が揃って同じ人間に白を出してしまっており、グレーも極端に広かったのだ)、かといって寡黙になるわけにもいかなくてものすごく焦ってしまったのである。元々あがり症の僕だ。結果、喋るには喋るけど進行の確認や設定の確認ばかり、というなんとも怪しい人物になってしまったのだ。  言葉数を稼ぎたいのに実のあることを何も言わない、ようなやつが一番疑われるのである。  結果、その時僕は初手で吊られてしまったのだった。その村のレベルがそれなりに高く、寡黙吊りできる位置がまったくなかったのも大きかっただろう。同じ人狼仲間からだいぶバッシングされたのは言うまでもない。あくまでプロの大会などではなく、素人が集まって行うオンライン対戦だったからまだ良かったものの。 「もうあんなポカはしないっつーの」  あれから数年。  僕は兄貴と共に、人狼ゲームを千回以上も参加し、練習を重ねてきた。それぞれの戦略に関しても学んだ。まだまだツメが甘いと兄貴には言われるが、予選の12Bは特に練習した配役の一つだ。絶対に負けるわけにはいかない。 「兄貴こそ、僕の足引っ張るなよな!」 「はいはい。ま、肩の力抜いて頑張ろうぜ、遥来」  ピンポーン!とアラームが鳴った。画面が自動で切り替わる。予選開始の時間となったのだ。予選の参加者の名前は次の通り。  初日犠牲者(NPC。固定)  ツギクル(僕達のことだ)。  アコ。  ねずみねこ。  トッカータ。  青色。  砂時計。  ジョニー。  ミリアリア。  N。  ヒズミ。  餅。  このメンバーに、それぞれ村人四人、占い師一人、霊能者一人、狩人一人、人狼二人、狂人一人、妖狐一人が割り振られるというわけである。ちなみに、初日犠牲者が持っていく可能性がある役職はシッポがないもの、村人か占い師か霊能者か狩人か狂人に限定されている。初日犠牲者が要職についているかどうかは完全にランダムなので――まあここは、運を天に任せるしかない。  画面が一日目の夜の表示になった。 「ま、マジか」  僕と兄は同時に声を上げる。  表示されたチーム・ツギクルの役職は――よりにもよって、占い師であったのだから。
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