人狼ブラザーズ!

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人狼ブラザーズ!

「なあ遥来(はるき)、覚えてるか?お前が俺と、初めて人狼ゲームに参加した時のこと」  兄である好来(よしき)がにやにやしながらそんなことを言いだしたので、僕はやや憮然として返した。 「覚えてるっつーの。忘れるわけないだろ」  汝は人狼なりや――人狼ゲームの人気が再燃したのは数年前。かつて大流行していたゲームの再来であり、若者から年配者まで楽しめるスリリングなシステムとして今再評価を受けているところである。人狼ゲームの世界大会なんてものも開かれ、昨今はEスポーツと同等の存在として人気を博している。賞金が出る大会も数多く開催され、学校の部活動の一つの“人狼部”なんてものが当たり前のように設立されることも珍しくなくなったのがこのご時世だ。  人狼のプロ選手になりたい、と僕達兄弟が夢を見るようになったのも、日本人の選手が次々世界へ羽ばたくのを見たからである。 『今回勝利したのは、村人陣営!またしても、ナガラ選手の陣営が勝利をおさめました!』  精度の高い翻訳機能が搭載されたオンラインチャットを使い、今や世界中の人たちと人狼の共通ルールで戦うことができる世界になった。ナガラ選手、は十五歳で戦列なデビューを果たした、日本人のプロ選手の先駆けとなった人物である。小学生の頃から、僕と兄はそんなナガラ選手の活躍をテレビで見ていて熱狂していたのだ。この選手の凄いところは、ゲームにおいて“自分が強敵として認識されている”ことさえも利用して罠を張ることである。  汝は人狼なりや、というゲームは。それぞれ村人、狼、狐などの陣営に分かれて勝負を競うゲームだ。  ある村の中に紛れ込んだ狼を、一部村人の特殊能力と推理を用いて見つけ出して駆逐するという内容である。村人は毎日昼の時間に皆で相談して村の住人から一人ずつ処刑していき、狼はその処刑を免れながら夜時間に一人ずつ村人を食い殺していく。狼を駆逐できたら村人の勝ち、村人と狼の人数が同等となるまで村人を殺せたら狼の勝ち。第三陣営である狐は、そのどちらかの勝利条件が達成された時に生き残っていれば勝ち、といった具合だ。
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