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正月でもないのに昼間から酒を飲むのは久しぶりだ。
窓の外を覗くと雀が二羽、ちゅんちゅんとじゃれ合いながら晴天の空を飛んでいくのが見えた。外の景色からホテルの一室の中央へ目を向けると、『萩原東中学校第二十期生同窓会』という垂れ幕が貼られていた。
私は今一度がやがやとした室内を見回す。
「今年下の子が就職して、やっと子育てが一区切りついたよ」
「私はもうおばあちゃんよ。孫が可愛くてそれだけが今楽しみで生きてるわ」
「義母の介護が忙しくて、今日来られないかと思った」
近くの円卓を囲んでいたグループの会話が聞こえてきたが、あの頃、ともに学生服とセーラー服を着ていた少年少女だとは到底思えなかった。実際に何人かに声をかけられたが、大半が太っていたり、頭部が淋しくなっていたり、風貌が変わっているので私は初対面の人と昔の会話をしているという不思議な時間を過ごしていた。かく言う私も白髪が増え、腰痛持ちの初老である。相手も同じ気持ちで話しかけていたのだろう。同窓会が昼間にできるほど、私たちは社会から引退して時間を持て余していた。
——やっぱり来なくてもよかったな。
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