変な女

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その日も、順調に15万程稼いで、止めた。 仕事部屋から出ると、今日も庭には、洗濯物が干されている。 ルンルンと、ハミングしながら、家から出て来たルンタは 物置小屋へ行って、園芸用の小型の熊手と、剪定鋏を持ちだし まず、剪定鋏で、伸びている薔薇を剪定しようと、鋏を入れたが 10年も使っていない鋏は、スパッと切れずに、グシャグシャになる。 「、、駄目だ、こりゃ」独り言を言ったルンタは、剪定は諦めた様で 熊手で土を搔き、草取りを始めた。 「あ、花壇の縁には、春咲く、ムスカリや水仙の球根が有るんだぞ」 東吾は、はらはらしたが、ルンタは、球根の所は、上手く避けて 草だけを抜く、その手際の良い事「まるで、プロの園芸家みたいだ」 東吾は、目を離さず、思わず呟く。 東吾の父は、いつも忙しい、土曜日であろうと、日曜日であろうと その日でないと、会えないという相手に会わせて、仕事をする。 当然、家事など出来ない所だが、それでも、寝る間を削って掃除機を掛けたり 洗濯をしたりと、何とか頑張っていた。 もう年寄りになって、家事が億劫になり、再婚しようと思ったのだろうか だからって、あんな若い子としなくても、、、 庭まで、手が回らない父を見て、東吾が、庭の手入れをした。 と言うより、母の庭に、父を入れたく無かった。 庭には、母がこよなく愛した、薔薇が有る。 剪定や、肥料やりなど、母と一緒にしていたので、覚えていたが ネットで、薔薇の育て方を、詳しく調べ、草取りも、頑張っていた。 薔薇を枯らしてしまったら、母が悲しむ。 母との思い出が無くなってしまう、そんな思いが有った。 今、その庭で、母にそっくりのルンタが、草取りをしている。 あの日の母の様に、、、見ているルンタの姿が、何故かぼやけて来た。 その日も、ルンタは、五時半になると「また、明日~」と、帰って行った。 おかしい、再婚相手なら、親父が帰って来るまで、待っている筈だ 何で、五時半になると、帰って行くのか、その理由が分からない。 そう思いながら、一階に降り、母に線香をあげ、台所に行ってみた。 「今日は、カレーだよな」カレーの匂いが、二階まで届いていた。 思った通り、コンロの上の鍋は、カレーで一杯だった。 テーブルの上には、メモが有り「今日は、チキンカツカレーにしてみました 良かったら、食べて下さい」と、書かれていて、傍の皿には 布巾を掛けた、一口大に切られたチキンカツが、ど~んと盛られていた。 「だから~~親父の歳を考えろよ、そんなに食えるわけ無いだろうが」 東吾は、食器棚から、カレー皿を出し、炊飯器から、ご飯をよそうと チキンカツを乗せ、その上からたっぷりカレーを掛けた。 「頂きま~す」スプーンで一口、カレーを食べた東吾は 「旨いっ」と、声を上げた、誰が作ってもカレーなら、まぁまぁ食べられると 思っていたが、程よい辛さと、コクの有る深い味が 胡椒の利いた、チキンカツに良く合って、本当に美味しかった。 このチキンカツも、自分で作ったんだな、やるじゃないかルンタ。
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