第六章 君と一緒なら

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 ***  「社長、打ち合わせの後は?」  この日は、村谷商会へ打ち合わせに行った後の予定がなかった。  「特にこれということがないなら直帰させてもらう。  何かあったらすぐに連絡をもらえれば」  「分かりました。お気をつけて」  頷くと直樹は鉄道で東京へと移動した。営業では社用車を運転するが、打ち合わせの時は電車での移動がほとんどだ。打ち合わせに車を一台押さえるのは、もったいないと考えて使用は控えている。  サラリーマンの時の通勤は鉄道だったので、乗り換えも慣れている。  打ち合わせを順調に終わらせた直樹は、そのまま玲奈の勤める設計事務所のある街へと向かった。到着する頃には終業時間だ。帰宅を一緒にできそうだと思った。  設計事務所の近くに着くと、傍にあるカフェで待った。さすがに、従業員の夫でも就業中の会社には入れない。  コーヒーを飲みながら待つと、玲奈が同僚と一緒に出てくるのが見えた。連絡していたので、間もなく店に来るだろう。
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