第六章 君と一緒なら

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 「お疲れさま。待った?」  玲奈を見る直樹の鼓動が少し速くなった。結婚して十年以上()つのに、いつ見ても胸が高鳴ると思った。  「玲奈こそ、お疲れ。それほどは。少しゆっくりしてから帰ろうか」  梓は中学生、薫は大学生なので、それほど急いで帰宅しなくても大丈夫。  薫は東京大学に合格したので、余計に帰宅は遅い。でも、夢に向かって頑張る息子は両親の誇りだ。  そして、兄を追うように梓は京葉学園に進学した。優秀な子供たちに負けないように、直樹たちも頑張っているのだ。  「今日は手抜きしていい?たまにはゆっくりしたいわ」  「疲れたか?それなら俺だけで作るけど」  心配になって言うと、玲奈はカフェ・オ・レを注文しながら首を振った。  「大丈夫。  分譲地区の設計の注文が入ったの。だから、明日からしばらく専念になるのよ。それに備えたいなってね」  聞いた直樹は納得しながら頷いた。分譲地区の住宅の設計は、意外にデザイナーの個性が出ることが多い。思いきり設計できるなら楽しみだろう。
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