ヴィラン

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「やめろ……っ!」  なんとか声を絞り出す。  だが、その声が届かなかったのか目の前の人影は動きを止めない。 「やめろって……言ってんだっ!」  どうしようもない怒りが湧き上がり、再び声を絞った。  吸い込んだ空気が肺を刺し、痛みで咳き込む。 「……ん?」  人影はようやく気づいたのか、地面に倒れている僕を振り返った。   「そいつに、触るな……。そいつに……!」  繋がれている鎖を引っ張り、地面を這いながら僕は人影に近づく。   「……なぜだ?」  人影は一歩下り、這う僕を笑うように見つめてくる。  それに、僕は笑いかけてやった。 「取り引きを、しよう」  すん……とその場は静まり返る。   「……ふぅん」   そして、人影が興味がなさそうな生返事をする。 「お前が望んでいるのは、仲間なんだろ。なってやるよ。代わりに、そいつを解放しろ」  返事はなかった。  代わりに、人影は被り込んでいたフードをとる。   「……良いだろう。きっと」
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