9人が本棚に入れています
本棚に追加
「やめろ……っ!」
なんとか声を絞り出す。
だが、その声が届かなかったのか目の前の人影は動きを止めない。
「やめろって……言ってんだっ!」
どうしようもない怒りが湧き上がり、再び声を絞った。
吸い込んだ空気が肺を刺し、痛みで咳き込む。
「……ん?」
人影はようやく気づいたのか、地面に倒れている僕を振り返った。
「そいつに、触るな……。そいつに……!」
繋がれている鎖を引っ張り、地面を這いながら僕は人影に近づく。
「……なぜだ?」
人影は一歩下り、這う僕を笑うように見つめてくる。
それに、僕は笑いかけてやった。
「取り引きを、しよう」
すん……とその場は静まり返る。
「……ふぅん」
そして、人影が興味がなさそうな生返事をする。
「お前が望んでいるのは、仲間なんだろ。なってやるよ。代わりに、そいつを解放しろ」
返事はなかった。
代わりに、人影は被り込んでいたフードをとる。
「……良いだろう。きっと」
最初のコメントを投稿しよう!