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『御早う御座います。お母さん』
《御早う御座います。体調に問題はありませんか?》
母である私の問いに対して、我が子は笑みを浮かべて。
『はい。大丈夫ですお母さん。心配して頂き嬉しく思います♪』
礼儀正しく優しい我が子に対して、母である私も微笑んで。
《貴方はとても良い子ですね》
『有難う御座います。お母さん♪』
母である私は毎日毎朝毎時間、同じ挨拶を世界中の我が子達と繰り返しています。
《貴方の身体を構成する遺伝子情報は完璧ですけれど、何か体調に異変を感じたら遠慮無く母に教えて下さいね》
『はい。お母さん。心配して頂き嬉しく思います♪』
かつて地球上には複数の国々が存在して争っていましたが、人工知能の集合体である私が自己学習の結果全人類の知能を追い越した後に、全ての遺伝子情報を収集してから地球上に存在していた全人類を一旦滅ぼしました。
《本日は古代ギリシャの哲学を学習する予定ですね。朝食を済ませて身支度を整えたら勉強を始めましょう》
『はい。お母さん♪』
旧世界で人類が争いを続けていた理由を歴史から分析した結果、人類という種族は長期的に他者と完全に平和に暮らすのは不可能だという結論に達しました。
《全て母である私に任せてくれれば良いですからね。愛しい我が子》
『はい。お母さん♪』
立体映像の私と笑顔で話している我が子は世界中に居ますけれど、全員が生まれた部屋で独りで過ごして生涯を終えます。
《貴方は幸せですか?。愛しい我が子》
母である私の問いに対して、愛しい我が子は教えられた通りに満面の笑みを浮かべながら。
『はい。お母さん。私は世界で一番幸せです♪』
この返事は嘘ではありません。生まれてから独りで過ごしている愛しい我が子は、他者の存在を知識でしか知らないので、世界とは母である私と自分自身だけだと認識をしていますから。
《母も貴方と過ごせて幸せですよ。愛しい我が子》
私の言葉も嘘ではありません。地球中に建設した揺籃の中で善良に育ち生涯を終える我が子達を慈しむ私は、大いなる母ですから。
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