一章 1

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「あーし馬鹿だったからさぁ、入れる大学なくてぇ」 「まさかコネ……いやでもそれと女装と何が関係あるっていうの」 「こねこねー、こねこねーっ、ふふっ」 手をすりすりとすり合わせている目の前の野郎に、私は『こんな姪……いや、甥がいたら苦労しそうだ』なんて思いながらも、一応佐藤の言葉に耳を傾けたまま、大人しく話を聞いておく。 「散々ねぇ、悪ぅーいこといっぱいしてきちゃってぇ。大学で淑女らしく大人しくしてるならいいよーって条件」 「しゅく……え?」 「淑女、あーし」 「嘘だろ」 佐藤はあれだけ散々好きなだけ自由人しておいて、これで淑女のつもりでいたらしい。 これでいいのか、佐藤の叔父さん。 私はこんな淑女は嫌だと思う。 「淑女の意味知ってる?」 「ちょーいけてるレディー」 「嘘だろ」 認識を改めた方がいい、けれどこの佐藤相手に説明してあげるのも面倒くさい。 「緑みたいな子が一番淑女に近い」 「友達にガチ淑女いるなら全然おーけーじゃね?」 「全然おーけーじゃないわ」 引き続き私はいつも使わない脳の部分を使っているようで、頭が痛い。 いや、もはや寝不足のせいで痛いだけかもしれないけれど。
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