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いっちょまえに、彼は嫉妬をしてくれているようだ。
「何、アンタも私の腕の中に入りたいの」
「え!?マリも入りたいんだけど!!」
「アンタはちょっと黙ってなさいよ」
「ひぇっ」
私が体を起こして佐藤を見れば、その顔はさっきよりも不満そうにしている。
緑相手に、そんな佐藤が珍しい。
「和香、連れ出していい?」
「……だって、和香。アンタはどうしたいの?」
柔らかく笑って聞いてくれる緑。
きっとさっきの言葉は緑なりに私の背中を押そうとしてかけてくれた言葉だった。
私が私をいじめないで、感情を比べない、疑わない、否定しない……私の中にある、本当の気持ちは……。
緑に向けて、私は小さく頷いた。
「緑、ありがとう。行ってくる」
立ち上がり、私が佐藤に向き合うと、彼は私の手に手を重ねて、小さく引く。
「残り時間も少ないから、戻ってこなくていいわよー。あとで新作タルトおごってね」
「え!!じゃあさとちん、マリはGOIVAのチョコレートケーキワンホールがいい!!」
「欲張り過ぎじゃない!?……いい、わかった、うまくいったら全部おごる!!」
「やったぁ!!!」
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