三章 3

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「誰にでも優しくて、誰とでも仲良くなれて……良い奴は確かに集まってくるけど、その中に本気でずっと付き合ってくれるほど強い繋がりを持つ奴なんて、いなかった」 思い出すのは、シンプルな病室。 なにも飾られていない、最低限のものしか置かれていない、病室。 ────誰一人として、お見舞いに来る友達がいなかったということだろうか。 「誰とでも仲良くなれる。けどそれは誰とも深い仲になれないことの裏返しでもあって」 「……そんな」 「俺はすげぇ、悔しかったんだよ。あんなに羨んでたくらいすげぇ妹が、目を覚まさなくなっただけで簡単に切られる繋がりの脆さに」 片手で頭を抱える佐藤は、震える声で言葉を紡ぐ。 「蜜のことがすげぇ羨ましくて、自分と勝手に比べて、それで俺はグレたのに」 「それでグレたのか」 「なんで人一倍頑張ってたアイツの周りには、そんなやつしかいなかったのかって……」 流れとして、わかってきたような気がする。 佐藤は簡単に妹を切ってしまう蜜ちゃんの周りの環境が悔しくなって、それなら自分が……と、簡単に裏切らない関係を求めていた。 そして辿り着いたのが、私たち。
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