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「私はそんな蜜ちゃんが羨ましいと思う」
……羨ましいってなんだ、別に妹になんて嫉妬してるわけじゃないぞ、なんて頭の中で逃げ道を探すも、うまく言葉にならない。
「和香は、蜜が羨ましい?」
「……だって、そんなに自分を想ってくれる人なんて、なかなかいない」
俯いてしまう私の耳には、その後の言葉が聴こえて来ず。
数秒経ってから、それに気付いて佐藤を見上げる。
「……?」
「想ってる奴、ここにいるよ」
ふわりと腰から背中に回される腕が、私を引き寄せる。
まって、なんで、急に……そんな雰囲気、だったっけ?
「のどか」
首に顔を埋めて擦り付ける、髪の毛がくすぐったくて体をきゅっと捻る。
「……な、なに」
「和香のこと。俺が誰よりも想ってる自信ある」
「え……いや、でも」
「だめ?」
「……っ」
見慣れない男の姿で媚びるように顔を覗き込んでくる佐藤に、こういう時ばっかり可愛く見せる所が恨めしい。
可愛く見えてしまう私の眼も、相当佐藤の色に染まっているんだろうけれど。
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