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どくどく、高鳴る心臓の音は、聞こえていないだろうか。
熱くなる顔は、抱きしめられているから、見られはしない。
けれど私も……その氷の顔が、見えない。
「のどか」
優しい声で、求愛してくるような、甘い声。
「俺をあげるから、和香をちょーだい」
首をすりすりと擦られると、簡単に頭の中が真っ白になる。
欲しい、欲しいと思ってしまう。
いや、いいんだ、欲しくなって、いいんだ。
自分のかけた呪いは、自分で解かなければ、前になんて進めないのだから。
「私も、ほしい」
「……っ」
「氷が……その、うわっ」
痛いくらいにぎゅーぎゅーと締め付けられる腕に、呼吸することも苦しくなる。
ばか力、あくまで男の力なんだ、私が勝てるわけもない強い力。
いや、戦っているわけ、では、ないはずなのだけど。
「もうダメ、好き。和香が大好きで俺溶ける」
「溶けるの?」
「溶けるから、和香も一緒に溶けて」
なんて無茶言いやがる。
なんて心の中でツッコミを入れている間に、首筋にきゅっと吸い付かれていて、その頭を離そうと藻掻く。
前言撤回、私たちは戦っていたのかもしれない。
ちょっと待って、今首に何をしたんだこいつ。
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