三章 3

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逃げてしまいたい自分の心を、強く食い止めて、それだけでも今日の私はよくやった、勤勉だった。 これ以上は未知の領域に足を踏み入れる前にキャパオーバーを起こす。 「のどか」 彼の手が、頬に当てられる。 くいっと上を向けられた私の顔は、隠しようがなくなってしまって、情けない顔が向けられていることだろう。 それでも、満足そうに、幸せそうな顔で私の顔を覗き込む彼は、酷く近い距離にいて。 そっと、唇が触れて、離れた。 深い想いを、その一瞬にぎゅっと込められたような、震えるようなキスだった。 「好き。どうしようもないくらい、和香のことばっかり考えてる」 「……う、ん。……私も」 「ん」 一呼吸置いて、振り絞る勇気。 今度はその微かな距離を埋めたのは、私の方から。 微かすぎてくすぐったいくらいのキスを、それでも精いっぱいの私の想いを詰め込んで。 「――――氷が、すき」 その後、黄昏時の薄闇の中。 私たちはもうしばらく、想いを重ね合わせていた。
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