一章 1

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「アンタのせいで寝れなかったって、言ってんのに」 「あーしのせいで眠れなかった和香が、あーしの手の中で寝てくれるなら、本望だぁよ」 いちいち、語尾に星やらハートやらをちらつかせて来る言い方は癪に障るけれど、不思議と真っ暗になった視界の中では、そんなこともどうでもよくなってきていて。 「……佐藤、は……私の知ってる佐藤、のまま?」 「……うん、あーしはあーしだよ。これまでもこれからも」 「……ん」 そんなに簡単に、とっくに解きほぐされていた警戒心なんて戻ってくるはずもなく。 聴き慣れたハスキーな声に、心臓がとくん、とくんと落ち着いて来て。 そのまま私は、まどろみの中へと落ちていく。 佐藤の声は、前から変わらず、ずっと、心地のいいままだ。 「おやすみぃ、のどか」 深く深く、沈んでいく。
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