終章

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「いや、付き合うことになっただけなんだけどね?ちょっと話してすぐ帰ったし?」 「……っ」 公開処刑だ、こんな、今のタイミングで言わなくても……。 そう思ってるのに、思いの外二人の反応は薄かった。 緑はともかく、鞠が大人しいなんて珍しい。 流れるように梅干しを鼻の頭に近付けてくる彼氏のせいで、口の中でみるみる唾液が広がってくる。 なんでいつも持ち歩いてんだ。 「まぁそうなってくれないと、昨日の私が報われないしね」 そう言った緑が私にふっと笑う。 お世話おかけしました緑さん、マジ姉御。 「ふふ!チョコレートケーキっ」 鞠はどうやら私たちが付き合ったことよりもチョコレートケーキをおごってもらう約束の方に意識が向いていて、さほど騒がないで済んでいるらしい。 まぁ、『うまくいったら』なんて、さすがにこれから付き合うよっていう宣言と変わりなかったからね。 口の中に放り込まれた梅を顔中に全力で皺を寄せつつ食べると、多少頭がすっきりした。 なんだこの現象、塩分の力か、それともあまりの酸っぱさに体が危機を感じているのか。 ちなみにタルトとチョコレートケーキは次の日曜日に買って四人で食べる予定になった。
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