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幸せ
「おい、待てや。そんなことしたら……」
風間さんの動揺が伝わってくる。
ああやっぱりこの人はいい人だ。
「風間さん、親分さんの治療のお役にたてなくてすみません」
俺はペコリと頭を下げた。
「何呑気なこと言っとるんじゃ! 兄さん、このままじゃあんた、嬢ちゃんに取り込まれるで!」
風間さんが足を引きずりながら駆け寄ってくる。
「これでいいんです。俺もリオと一緒に生きていくことを望んでるんで」
俺は、風間さんにそう告げた。
「待て! あんたそれ、本心から言うとるんか? 嬢ちゃんに操られとるんと違うか!?」
風間さんが俺に向けて伸ばしかけた手を思わず引っ込めた。
「兄さん……なんじゃ、そりゃあ……」
風間さんの動きを制した俺の手のひらからは、アメーバのようにどろどろとした粘液が溢れていた。
すでにリオと繋いでいた手は、ベットリと彼女に融合して離れなくなっていた。リオは俺のサバイバルナイフで邪魔な服を切り刻む。
生まれたままの姿になって、俺たちは抱き合った。
リオの体からは痺れるような甘い香りが最高潮に放出されている。
その匂いを頭の先まで吸い込むと、痺れと共に体が軽くなり、まるで空でも飛んでいるかのような浮遊感と味わったことのないような多幸感に包まれた。
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