風間のエピローグ

1/1
前へ
/55ページ
次へ

風間のエピローグ

 この不思議な体験後、ワシは廣瀬組の本部へと戻った。  必死の闘病も虚しく、親父は程無くして亡くなった。  だが人魚にとり込まれて海底で永遠の時を生きるより、人として地上で天寿を全うできた方が親父のためじゃったと今では思える。  時折兄さんを思い出して胸が痛む。そんなときワシは一人尾頭へ行き、缶コーヒーを飲みながら瀬戸内海を眺める。  兄さんたちは日本海に消えていったが、世界の海はつながっちょる。問題ないじゃろう。 「よぉ兄さん。元気でやっちょるか? 安心せい。あの日の秘密、ワシゃ墓場まで持ってくけぇのぅ」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加