推し!?

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「ねえお願い! 母さん!」  怖がって逃げてばかりいたら、じぶんの世界は心地よくならないし広がらないということを知ってほしくて、夫と相談し浩輔をサッカークラブに入れたのは正解だったと思う。ここまでちゃんとじぶんの思いをくちにできるようになったのだ。息子の成長をじんわり嚙みしめていたら浩輔はすかさず畳みかけてきた。 「突破口を見つけたらそこを攻めて攻めて、攻めまくれ!」  という、サッカー好きのサッカーのための、主人のアドバイスをこんな時にまで応用してくるとは、浩輔もしたたかになったものだ。またしても心がへらりと溶けかかる。ああ、親ばかだ。  なにも言い返さないわたしに、浩輔は文字通り詰め寄ってきた。 「この通り!」  と、両手を合わせてきた。合掌の向こうで大きな瞳が必死にわたしを見つめる。ああもう、子どもが子どもでかわいい。と、意味不明な日本語で全身がいっぱいになってしまいそうだ。  浩輔の上に、うちには二人のお姉ちゃんがいる。ふだんなら姉たちとゆずりあってタブレットを使うわけで、当然ゲーム時間も2時間以下になる。それがいま、二人とも部活の合宿で不在なのだ。浩輔の気持ちもわからなくもなかった。
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