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ここで、「だったらお手伝いしてよ」とか、「今度のテストで100点を取ってこい」とか、親の権威を振りかざすような条件を言うのはわたしの心情に反する。そんなことを言えば、子どもは、親に喜ばれるためには、うちで生きていくためにはいい子でいなければならない、という制限をじぶんにかけてしまうかもしれない。では、どうするか。
「しようがないなあ」
わたしはにやりと笑った。
「許すから、かわりにママをぎゅってして」
「え?」
まだわたしを「ママ」と呼んでいたころ。浩輔は幼稚園から帰ってくるといつもわたしの足をぎゅうっと抱きしめていた。それが嬉しくて、小学生に上がってもずっとしてほしかったのだが、いつの間にかやらなくなってしまった。おまけに、「ママ」から「母さん」にかわっていった。
「ほら、両手でぎゅーって」
わたしはにやにや笑いながら両手を広げ、ウエルカム状態を見せた。
「なんだよそれ」
口をへの字に曲げて、浩輔はあからさまに嫌そうな顔になった。
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