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「失礼、サカモト。柄にもなく物思いに浸ってしまいました。それより、私に何か用事では?」
「……デッド・モーゼルが呼んでいる。至急、報告したいことがあるそうだ」
アーク・エネミーの先代ボスの頃からその片腕を務めるこの男は、いつも多くを語らない。
だがそれが、かえってこの男をより信頼できるものとしていた。
自分も、触れられたくないものがある。きっと、この男も同じなのだろう、と。
「あら、デッドちゃんが? 今日は哨戒がお仕事だったはず。めずらしいですね、いつもならそんなお仕事は人に押しつけてお酒飲んでますのに。ちゃんと働いているようで感心です」
「……早く報告を聞いた方がいいのでは? あれは確かに真面目に見張りなどする奴ではないが、腕は確か。その奴が至急と言うなら、それなりの可能性も」
確かに、サカモトの言う通りである。組織の右腕がサカモトならば、デッドは左腕と言える実力者だ。
その彼が言うなら、何かしら不測の事態が起こっている可能性は高い。
無意識のうちに銃のグリップを確認してから、アリサは部屋を出た。
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